Posted on January 23, 2020
インテル、ハバナ・ラボを買収
2019年12月22日
インテルは12月16日、起業3年目のイスラエル新興企業ハバナ・ラボ (Habana Labs) を20億ドルの現金で買収することに同意したと発表した。
これは「またイスラエル新興企業がもうひとつイグジットした」という月並みな出来事ではない。このイグジットが意味するものは国内だけにとどまらず、国際的なレベルでも広く影響を与えることになる上、イスラエルのテクノロジー部門に見られる重要トレンドを複数示している。
この記事では、二社についての主な企業情報をご紹介するほか、今回の買収がなぜそんなに重要なものなのかをまとめてみたい。
今回の取引について
買収側
被買収側
取引はいくらで設立したのか
インテルは現金による20億ドルの売却額支払いに同意し、これまででイスラエル最大の全額現金取引となった。資金調達の最終ラウンドに参加したものも含め、投資家のすべてが非常に大きな利益を上げることとなる。
なぜ買収に踏み切ったのか
インテルの動機
インテルは最近、AI部門で一連の買収を行った。急成長を続け、市場規模が2024年までに250億ドルに達すると推定されるAI市場で、業界リーダーのインヴィディア (Invidia) に追いつき、自らリーダー的な立場を確保するのがねらいだ。
インヴィディアは今年の初め、イスラエルのAIチップ開発会社メラノックス (Mellanox) の買収争いでインテルを破って69億ドルを支払い、イスラエル最大の取引のひとつを記録した。インテルは、同社のニーズに合った製品を開発している若く実績ある企業を購入するチャンスをもうこれ以上逃す余裕はないと判断したらしい。
ウィレンスキーは大企業嫌いで知られているが、ブロードコム (Broadcom)、アマゾン (Amazon)、そして今回のインテル相手にと、過去20年の間新興企業を着実に売却してきた。ハバナ・ラボは今回の買収で一躍大リーグの仲間入りをし、これから先インテルの技術的、財政的、経営的資源の恩恵に与るわけだが、独自のアイデンティティとイスラエルを活動の場にすることは維持し続ける。(ただしウィレンスキーは一定期間の後、ハバナ・ラボ専属からハバナ・ラボとインテル両社の「特別顧問」に就任する)。
広い意味合いを解く
関与のあり方にも違いがあることを比喩的に示す、「めんどりと豚」という寓話をご存じだろうか。ハムエッグを料理するのに、めんどりは卵を提供するのに対し、豚はハムになって自分の身を犠牲にする。したがって、めんどりは関わっているだけだが豚は真にコミットしている、というものである。インテルはこの寓話を具体化したようなものだ。インテルは研究センターと製造施設の両方の面でイスラエルに投資してきたが、その規模と影響力では右に出る者はいない。だが実のところ、インテルとイスラエルは「持ちつ持たれつの仲」なのである。数十年にわたって蓄積されてきたインテルの投入なしでは、イスラエルのハイテクを想像することは不可能だ。また同様に、イスラエルの貢献なしでは、今日あるインテルの姿を思い描くことはできない。モービルアイ、そして今回のハバナ・ラボの買収は、引き続きインテルとイスラエルの関係を広げ、絆を強め、繋がりを深めるだろう。
2. イスラエルのAI状況
インヴィディアのメラノックス買収に続く、インテルのハバナ・ラボ買収、そしてAI分野で活躍するイスラエルの新興企業が400以上あることを考え合わせると、イスラエルは事実上、AI開発の主戦場となっているのがわかる。しかもAIは、2020年代の主要テクノロジーとなる見込みだ。これらの買収が企業ニュースからグローバル規模の地政学までに幅広く影響してくるのはなぜかと言うと……
3. 米中テクノロジー冷戦におけるイスラエルの立場
…… AIは米中がテクノロジーで争う主な分野のひとつだからだ。インヴィディアとインテルがAIの開発競争で先陣を切る拠点にイスラエルを選ぶことで、米中の争いにおけるイスラエルの立場――米国側――は、あからさまな政府の介入なしで暗黙的に決められる。米中の争いが激化すればするほど、イスラエルの商業的および技術的選択肢は狭まることになる。
ウィレンスキーは、イスラエルは有望な新興企業に対する権利を固く握り、幼少期に売却せず、イスラエルが所有する多国籍企業に成長させる必要がある、という考え方を否定した。彼の実績――そして彼が今までに売却した企業の実績――は、「連続起業家」であることのメリットを示している。また、イスラエルでの事業を拡大しながら企業を売却するのが完璧に可能――すなわち、いいとこ取り――なのを実証している。
イスラエルの新興企業部門の長所と短所を他にもいくつか、ハバナ・ラボで見ることができる。
© Pinchas Landau、2019年12月